預貯金の一部払戻し制度とは
預貯金の一部払戻し制度(民法909条の2)とは、それぞれの相続人が、遺産に属する預貯金のうち一定割合について、遺産分割前に、単独で払戻しを行うことを認める制度のことをいいます。
この制度は、平成30年の相続法改正で新設された制度になります。この制度が設けられるまでは、遺産分割前に、それぞれの相続人が被相続人の預貯金を単独で払い戻すことは認められていませんでした。そのため、遺産分割前に被相続人の預貯金の払戻しを行うことができず、亡くなるまでの入院費用や、葬儀費用等の費用について、相続人が自らの金銭を支出して支払うという状況等が生じていました。本制度はこのような状況を踏まえて新設された制度になります。払い戻された預貯金は、払戻しを受けた相続人が遺産の一部分割により取得したものとみなされることになります。また、この制度により払戻しが認められる範囲は、「相続開始時の預貯金債権の額」×1/3 ×「払戻しを求める共同相続人の法定相続分」という計算式で算出される金額の範囲となります。