相続財産の管理に関する準拠法について教えてください
日本のように相続に関する準拠法が包括承継主義をとる場合であっても、相続財産が海外にある場合には、その国の裁判所に対して財産の相続に関する申し立てを行う必要があります。この場合、相続財産の管理に関する準拠法は、動産であるか不動産であるかを問わず、遺産の所在する地の法律が適用になります。従って、アメリカやイギリスなど管理清算主義をとる国に相続財産がある場合、プロベイト手続きが必要かどうかや、プロベイト手続きの中でどのようにして財産の清算を行うのかについては、財産所在地の法律によって決定されることになります。
一方、アメリカやイギリスにある相続財産を相続人に分配する過程における準拠法については、手続きが係属している裁判所の国際私法の適用によって決定されることになります。アメリカのように相続分割主義をとる国においては、不動産については、不動産が所在する地の法律を準拠法とし、動産や流動資産などのその他の財産については被相続人の本国法やドミサイルのある国の法律が適用になることになります。
日本人がアメリカに不動産と動産を有している場合、不動産と動産の管理については、財産が所在する州の法律が適用になりますが、相続人への分配に際し、相続人が誰であるかという問題や各相続人の相続分の問題については、相続分割主義の適用により、不動産については財産が所在する州の法律が適用になり、動産については被相続人の本国法(日本の法律)が適用になることになります。また、財産が所在する地の国の国際私法でドミサイルのある地の法律が動産や流動資産についての準拠法となる場合は、被相続人が日本国籍を有する場合であっても、死亡時にその国に居住しドミサイルがその国にあると認められる場合は、ドミサイルがある国の法律が準拠法となります。