相続と遺産分割

  • 公開日:2024年05月08日

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相続と遺産分割

亡くなった人が持っていた権利や財産を引き継ぐことを相続といいます。亡くなった人を「被相続人」、財産をもらう人を「相続人」と呼びます。

亡くなった人の財産を「遺産」といい、現金、預貯金、有価証券、動産、不動産、著作権などの権利などプラスの財産と銀行からの借り入れなどマイナスの債務財産である債務を含みます。
これらの財産をまとめた財産目録を作っておく必要があります。

民法には相続人や相続割合について規定がありますが、被相続人が遺言書を残している場合には、遺言書が優先されます。遺言書がない場合には、相続人全員で協議し遺産の分割について決定する遺産分割協議を行い遺産の分割を行います。

相続人の順位

民法では、相続人となる人が規定されています。被相続人の配偶者は、常に相続人になり、第1順位の相続人は子、第2順位は両親、第3順位は兄弟姉妹です。同順位の人が複数いる場合は、全員が共同相続人となります。

また、先順位の人がいる場合は、後順位の人は相続人になることはありません。

例えば、ご主人が亡くなり、奥様と子供2人がいる場合は、第1順位の相続人は、奥様(配偶者)と二人の子供になります。

このようにまず法定相続人が誰になるかを定めるのが、法定相続人の順位の問題です。同じ順位の相続人の間でも、配偶者であるか、子供であるか、両親であるかなどにより法定相続分は異なってきますので、法定相続人の順位の問題と法定相続分の問題は別の問題として理解する必要があります。

第1順位配偶者のみ
子のみ

配偶者と子
配偶者:1


配偶者:1
子:1
※子の人数で割る。

子:1
※子の人数で割る。
第2順位配偶者と父母
※子がいない。

父母のみ
※配偶者、子がいない。
配偶者:2/3父母:1/3
※父母の人数で割る。

父母:1
※父母の人数で割る。
第3順位配偶者と兄弟姉妹
※子、父母もいない。

兄弟姉妹のみ
※配偶者、子、父母がいない。
配偶者:3/4兄弟姉妹:1/4
※兄弟姉妹の人数で割る。

兄弟姉妹:1
※兄弟姉妹の人数で割る。

相続割合

民法では、法定相続人が相続する遺産の割合が定められています。この割合を法定相続分と言います。

相続人が配偶者のみの場合、配偶者がすべて相続します。相続人が子のみの場合、子がすべて相続します。相続人が配偶者と子の場合、配偶者2分の1、子が2分の1相続します。

子が複数いる場合には2分の1を頭数で等分することになります。

例えば、配偶者と子が3人の場合には、配偶者が2分の1、子がそれぞれ6分の1相続します。相続人が配偶者と被相続人の親のみの場合、配偶者が3分の2、親が3分の1相続します。
相続人が配偶者と被相続人の兄弟姉妹の場合、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1相続します。

代襲相続

被相続人の死亡よりも前に、その被相続人の法定相続人である子や兄弟姉妹が死亡している場合は、代わりにその相続人の子が相続することができ、これを「代襲相続」といいます。

代襲相続が発生する原因としては、相続人の死亡のほかに、相続人排除と相続人欠格の場合があります。

相続人である子が死亡している場合には、その子(被相続人からみて孫)が、相続人である兄弟姉妹が死亡している場合には、その子(被相続人からみて甥姪)が代襲相続します。

被相続人の孫も死亡している場合には、ひ孫が再代襲相続することになり、第1順位に関しては、再代襲相続が続いていくことになります。ただし、甥や姪が死亡している場合、その甥や姪の子には再代襲相続は認められていません。

また、被相続人の父母が、被相続人の死亡より前に死亡している場合には、被相続人の祖父母が相続することになり、祖父母も死亡している場合にはさらに上の代に相続されることになりますが、民法では被相続人に子がいない場合には直系尊属が次順位の相続人になると規定されているため、直系尊属を上にさかのぼっていくことを代襲相続とは呼んでいません。

なお、相続放棄した相続人は初めから相続人でなかったことになりますので、代襲相続は生じません。

数次相続

数次相続は、法定相続人が最初の相続について承認するという選択をしたものの、具体的な遺産分割を行う前に亡くなってしまい、その法定相続人についての次の相続が始まってしまった場合をいいます。

代襲相続が、被相続人の死亡より前に相続人が死亡している場合であるのに対し、数次相続には被相続人の死亡時には相続人が生きておりその後死亡した場合であるという違いがあります。

再転相続

被相続人が死亡し相続が開始した場合、その法定相続人は、相続開始時から3か月以内の「熟慮期間」中に、相続を承認するか、放棄するかを選択しなければなりませんが、法定相続人が、承認するか放棄するかの選択をしないうちに亡くなってしまい、その法定相続人に関する相続が開始する場合を再転相続と言います。

この場合、2番目の相続の法定相続人(再転相続人と呼ばれます)は、最初の相続に関しても相続するか放棄するか判断することになります。再転相続人は、最初の相続と2番目の相続の両方を承認または放棄すること、最初の相続を放棄し2番目の相続を承認することができますが、最初の相続を承認し、2番目の相続を放棄することはできません。

単純承認と限定承認

相続が開始すると、相続人は3か月以内に遺産を相続するか放棄するか決めることになります。
相続する方法には、「単純承認」と「限定承認」があります。単純承認とは、被相続人が持っていたブラスとマイナスの財産をすべて相続する方法です。

相続が開始してから3カ月経過すると、自動的に単純承認したものとみなされます。

裁判所への届け出など特別の手続きは必要ありません。また、相続の熟慮期間内に相続財産を処分した場合は、単純承認をしたものとみなされ、その後相続放棄はできなくなってしまいます。

限定承認とは、被相続人のプラスの財産の範囲内で、借金などのマイナスの債務の負担を負う方法です。
限定承認は、家庭裁判所に申し立てる必要があります。また、相続人のうちの一人が単純承認した場合には限定相続することができず、共同相続人全員で申し立てを行う必要があります。

相続放棄

相続放棄とは、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産もすべて放棄する方法です。
相続放棄をするためには、相続人になったことを知った日から3カ月以内(この3カ月の期間を熟慮期間といいます。)に家庭裁判所に相続放棄の申述を申し立てる必要があります。

裁判所から受理されると、相続人ははじめから相続人でなかったことになり、代襲相続も認められません。相続放棄の3か月の期間は、「相続人になったことを知った時から」計算されますので、相続人であることや相続財産があることを知らなかったということで比較的緩やかに計算されます。

被相続人の死亡時から3か月以上経過している場合であっても相続放棄が認められることが多いですので、あきらめる必要はありません。

但し、大きな借金を背負ってしまうかどうかの判断を迫られることになりますので、相続放棄をするかどうか、その手続きをどうするかについては、弁護士にご相談ください。

なお、相続放棄を行った場合、その次の順位の相続人が相続することになります。
例えば奥様と子供が一緒に相続放棄をした場合であっても、被相続人のご両親や兄弟が健在な場合は、ご両親や兄弟が相続することになって、債務を背負ってしまう可能性があります。

相続放棄を行う場合は、これらの次順位の相続人の利益も考慮し、これら次順位の相続人ともよく協議してから放棄するのが好ましいと考えられます。

相続人の調査

遺産相続手続においては法定相続人が誰であるかを確認する必要があります(相続人の調査)。実際には、被相続人の「生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本」を集めて確認します。

現在の戸籍謄本から本籍地をさかのぼる方法で調査しますが、現在の戸籍のほかに、改製原戸籍が必要になる場合があります。

相続人の調査が十分でない場合、一部の相続人を欠いたまま遺産分割協議を行ってしまうことがありますが、このような遺産分割協議は無効となります。

例えば、被相続人であるご主人が、現在の奥様と結婚する前に婚姻外の子供を有していた場合、その子供も相続人になりますので、この子供を無視して遺産分割協議を行うことはできません。
奥様やお子様にとっては先妻の子供に連絡を取るのが精神的にも負担が大きいかもしれませんが、弁護士などを介在させて協議を進めていかざるを得ません。

相続財産の調査

遺産相続が発生したら、被相続人の財産を調べることが必要です。
遺産分割を行ったあとに、新たに遺産が発見された場合、新たに発見された遺産について改めて遺産分割をする必要が出てくるからです。

財産目録は、被相続人が所有していたすべての財産について正確に記載します。不動産、動産、株式、預貯金、美術品などだけでなく、借金、ローンなども網羅的に記載する必要があります。

不動産や美術品については、評価額も調査する必要があります。これらの財産の調査とその評価は相続税の申告書を作成する段階で必要となってきます。

遺産分割の方法

遺産分割の具体的な分割の方法としては、現物分割、換価分割、代償分割、共有分割があります。
現物分割とは相続財産をそのまま分割することです。

例えば、不動産は妻、預金は子というような形で分けることになります。不動産の現物分割は、たとえば妻の持ち分2分の1、子の持ち分2分の1ずつ分筆登記する方法があります。

換価分割とは相続財産を売却して換価したうえで売却代金を相続人間で分ける方法です。

相続財産が不動産しかない場合など、換価分割のほうが相続人間で公平に分割できる場合があります。

代償分割とは特定の相続人が特定の遺産を相続し、それを相続しない他の相続人に対して代わりに金銭等の自己の財産を渡す方法です。

たとえば、相続財産が自宅のみの場合に、引き続き居住する相続人が自宅を相続し、他の相続人に代償金を支払うという方法になります。遺産分割の最後の方法は、共有分割といい、遺産そのものを相続人の間で、相続割合に応じて共同で所有する方法です。
共有の不動産を売却するには共有者全員の同意が必要で、共有状態の解消のためには、共有物分割請求を提起する必要があります。