在日韓国人の相続人が相続放棄をしたケース

  • 公開日:2024年05月14日

相談状況

特別永住許可を有する大韓民国(韓国)籍の男性Xが死亡しました。

Xは3億円程度の資産と8億円程度の負債を有していました。
そこで、Xの相続人(配偶者及び子)は、相続放棄を考えていましたが、被相続人が大韓民国(韓国)籍であることから、大韓民国(韓国)における戸籍謄本の入手の必要性を含め、どのような資料を収集すべきかが分からず、栗林総合法律事務所にサポートを依頼してこられました。

解決方法

相続放棄をするためには、資産と負債の調査を行い、相続債務が相続する資産を上回っているかどうかを確認する必要があります。

本件では、銀行預金は全て金融機関から差押えを受けており、不動産については3億円程度の資産価値があるものの、銀行からの差押さえによって処分しえない状態にありました。

被相続人には、その他にめぼしい資産はありませんでしたので、奥様やお子様たちとも協議の上、相続放棄を行うのが好ましいとの結論になりました。

被相続人は、特別永住許可を有していましたが、国籍は大韓民国(韓国)ですので、日本の通則法の適用により、韓国法が準拠法となります。韓国法では、相続人の範囲や相続分が日本法とは異なっており、また被相続人の子や孫ではなく、被相続人の直系卑属が相続人とされています。

そこで、韓国民法に基づき相続人の範囲や相続分を確定するとともに、配偶者、子、孫について順次相続放棄の申述書を家庭裁判所に提出しました。

被相続人の直系尊属は全員お亡くなりになっていると考えられますので、第3順位である被相続人の兄弟姉妹についても相続放棄の手続きをとる必要があります。

兄弟姉妹及びその子、孫のうち、日本に居住する者については日本の家庭裁判所に対して相続放棄の申述書を提出しました。韓国に住所を有する相続人については、韓国の家庭裁判所で相続放棄の手続きを取っています。

その際、被相続人が日本に居住していましたので、韓国の裁判所が相続放棄の申述受理についての管轄を有するかどうかは韓国の法律によって定まることになります。

また、韓国に住所を有していると思われる相続人(兄弟姉妹の子)の中にはどうしても所在の調査ができない者がいました。
この者については、日本の家庭裁判所に対して不在者財産管理人の選任を申立て、不在者財産管理人によって相続放棄をしてもらうことになりました。
これにより全ての相続人による相続放棄を完了させることができました。

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