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日本での相続税の申告手続き
相続人や被相続人が外国に居住していたり、相続財産が外国に所在するなど、国際的性質を有する遺産相続(国際相続)の場合であっても、相続人(遺産を受け継ぐ人)または被相続人(亡くなった方)のいずれかが日本国籍の場合や、日本に住所を有していた場合、日本での相続税の申告が必要となる可能性があります。
目次
被相続人が日本国籍で、日本国内に住所がある場合
被相続人が日本国籍で、日本に住所がある場合は、相続人が日本国内に住所を有しているかどうかにかかわらず、国内財産と国外財産の両方に対して日本の相続税が課せられることになります。相続人の国籍は関係ありません。
被相続人が日本国籍で、10年以上日本国内に住所を有していない場合
被相続人が日本国籍で、10年以上日本国内に住所を有していない場合において、相続人も10年以上日本国内に住所を有していない場合、日本国内の財産に対してのみ日本の相続税が課税されることになります。相続人も被相続人も10年以上日本国内に住所を有していない場合には、日本国外の相続財産に対しては日本の相続税は課税されないことになります。反対に、被相続人が日本国籍で、10年以上日本国内に住所を有していない場合においても、相続人が10年以内に日本国内に住所を有していた場合には、日本国内の財産だけでなく、日本国外の財産に対しても日本の相続税が課税されることになります。
被相続人が外国国籍の場合
被相続人が在留資格を持って国内に居住する外国人の場合、日本国内の財産のみが日本の相続税の対象となります。例えば、日本に住所を有するイギリス人が、日本とイギリスの両方に財産を有したまま亡くなった場合、日本に所在する相続財産に対しては日本の相続税が課せられることになりますが、日本国外にある財産(イギリスにある財産)については、日本の相続税は課せられないことになります。
相続税の申告期限
日本における相続税の申告期限は、被相続人がお亡くなりになってから10か月となっています。これまでに相続財産の調査を行い、申告書を提出する必要があります。外国における相続税や遺産税の申告期限については、その国ごとの法律によって定められることになります。
外国財産についての申告
外国に所在する財産については、申告期限(10か月)の期間内に相続財産の有無や評価額が判明しないことも多くあります。特に、外国財産に対してプロベイト手続きが取られている場合は、10か月の申告期間内に相続人が取得する外国財産の有無やその評価額が判明しないこともあります。このような場合は、一旦暫定的に外国財産の評価を行い、それに基づき相続税の申告を行い、後日プロベイト手続きが終了した段階で、正しい金額に修正申告することが適切と思われます。
外国税額控除の制度
日本の相続税は相続人に対して課せられるのに対し、アメリカの遺産税は、遺産に対して課税されることになります。その結果、アメリカに居住する日本人がアメリカに遺産を残してお亡くなりになった場合、アメリカで遺産税が課せられるとともに、日本でも相続人に対する相続税が課せられることになります。この場合二重課税の問題が生じることになりますが、日本の相続税法では外国税額控除の制度があり、二重課税の適用を排除することができます。
日米相続税条約
外国税額控除の制度は、財産の所在地国で課された税金に限って適用されますので、財産の所在地以外の国の法令により課税された場合は、外国税額控除の適用はありません。従って、日本とアメリカ以外の第三国にある相続財産についてアメリカで遺産税が課税された場合に、日本で外国税額控除の制度を適用することはできません。但し、日本とアメリカとの間では日米相続税条約が適用になりますので、二重課税が回避できるよう調整されることになります。
アメリカの遺産税の課税対象
被相続人がアメリカ国籍を有する場合や、アメリカの居住者の場合、被相続人が有していた全世界の相続財産がアメリカの遺産税の対象となります。これに対し、被相続人がアメリカに住所を有しない外国人の場合、アメリカにある相続財産に対してのみアメリカの遺産税が課せられることになります。例えば、アメリカに居住していない日本人がアメリカ国内に銀行預金、不動産、証券、IRA(個人退職年金)などを有していた場合、これらの財産(アメリカ国内にある財産)に対してアメリカの遺産税が課せられることになります。
アメリカの遺産税の基礎控除額
被相続人がアメリカ国籍を有する場合や、アメリカの居住者の場合、2024年度におけるアメリカの連邦遺産税の基礎控除額は1361万ドル(1ドル150円で計算すると20億4150万円)となっています。この基礎控除は、本来は、被相続人がアメリカ国籍を有する場合やアメリカの居住者である場合に限って適用されることになりますが、日本は、アメリカ合衆国との間において遺産税に関する条約(Death Tax Treaty)が締結されていますので、IRS(内国歳入庁)に対してForm8833 (Treaty-Based Return Position Disclosure)を提出することで、アメリカ人と同様の基礎控除を受けることができます。その結果、ほとんどの日本人の遺産相続については、相続財産の額が基礎控除額の範囲内に収まり、遺産税が実際に課せられるケースはほとんど生じないことになります。但し、アメリカ人と同様の控除を受けるためにはForm8833の提出が必要であり、これを行わない場合には、6万ドルを超える遺産について連邦遺産税が課せられることになります。アメリカの遺産税についてお知りになりたい場合は、栗林総合法律事務所にお問い合わせください。なお、アメリカ国内にある相続財産に対しては、連邦遺産税とは別に州の遺産税も課税されますので、アメリカ国内にある財産の遺産相続に際しては、州の遺産税についても確認が必要となります。
日本の相続税の基礎控除額
日本の相続税の基礎控除額は、3000万円+法定相続人の数×600万円となっています。従って、法定相続人が3人の場合は、3000万円+3人×600万円=4800万円が基礎控除額ということになります。法定相続人が外国籍の場合や、相続財産が外国にある場合もこの計算方法は変わりません。
日本の相続税の計算方法
日本の相続税の計算方法は、国際相続の場合であっても異なりません。相続財産から基礎控除額を控除し、相続税の全体の金額を算出します。その上で、各相続人の具体的な相続分に応じて相続税を割り振ることになります。
栗林総合法律事務所のサポート業務
栗林総合法律事務所では、日本人や外国人がお亡くなりになった場合の相続税の申告業務のサポートを行っています。栗林総合法律事務所では、日本の相続税の申告のみにかかわらず外国における相続税(遺産税)の申告手続きもサポートしています。栗林総合法律事務所のサービス内容は次の通りです。
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本の取得
- 被相続人の除籍謄本の取得
- 相続人の戸籍謄本の取得
- 相続財産の調査
- 日本における相続税の申告業務のサポート
- 外国における相続税(遺産税)の申告業務のサポート
- 相続税に関するコンサルティング