在日韓国人の相続人を代理して遺産分割調停を行ったケース

相談状況

特別永住許可を有する在日韓国人がお亡くなりになりました。相続人は奥様Xと長男Aと次男Bの3人です。XとBは仲が悪く、遺産相続についても正常に話し合いを行うことができない状態でした。そこでBからの依頼により、日本の家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることにしました。

解決方法

法の適用に関する通則法36条では、「相続は、被相続人の本国法による。」と定められており、韓国国際私法49条でも、相続の準拠法は被相続人の本国法によるものとすると定められています。従って、今回の遺産相続については、韓国民法が準拠法となり、反致は認められないことが確認できました。相続人の範囲については、韓国民法1001条1項1号で、第1順位の相続人は「被相続人の直系卑属」とされています。直系卑属という言葉には、子だけでなく孫も含まれますが、韓国民法では、親等の近いものが全て生存している場合には、近親者が優先して相続人になるとされていますので(韓国民法1000条2項)、結果的に日本民法と同じく、子(A及びB)が相続人であることが確認できています。次に相続分については、同順位の相続人の相続分は原則として均等ですが、配偶者は直系卑属や直系尊属と共同で相続する時は5割加算となります(韓国民法1009条)。その結果、配偶者の相続分は7分の3となり、子A及びBの相続分は、それぞれ7分の2となります。このように被相続人が外国籍であるため、相続人の範囲や相続分に関して外国法(韓国民法)の適用があり、日本法と異なる点がありますが、その他については通常の遺産分割調停手続きと異なるところはありませんでした。遺産の調査については、通常の場合と同様に、金融機関にある預金については弁護士法23条照会による調査を行い、不動産については登記簿謄本から現在の権利関係を確認しています。家庭裁判所では、寄与分や共益費用の支出などについての主張もありましたが、最終的には韓国民法が定める法定相続分により分割されることで合意に至ることができました。

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