ムスリムであるパキスタン人の遺産相続についてアドバイスを行ったケース

  • 公開日:2024年05月14日

相談状況

パキスタン人Xは日本人の女性Yと結婚し、日本に居住していましたが、心筋梗塞でお亡くなりになりました。

Xは日本とパキスタンに財産を有していましたので、それぞれの国にある財産の遺産相続が問題となりました。

解決方法

法の適用に関する通則法36条では、「相続は、被相続人の本国法による。」と定められています。

従って、相続人がだれかという問題や各相続人の相続分の問題は相続に関する法律関係ですので、被相続人(お亡くなりになった方)がパキスタン国籍の場合には、反致が成立する場合を除いてパキスタンの法律が準拠法となるのが原則です。

パキスタンの法律では、被相続人(お亡くなりになった方)がムスリムの場合には、パキスタン国内に住んでいたかどうかにかかわらずムスリム法(1937年シャリーア法)が適用になります。

但し、ムスリム法の中でもスンニ派かシーア派かによって法律が異なってきます。
また、スンニ派についてはさらに4大学派(ハナフィー学派、シャーフイー学派、マーリク学派、ハンバル学派)が存在していますので、準拠法を決定するには被相続人が属する学派を確認する必要があります。

本件では、イスラム教徒のスンニ派ハナフィー学派ですので、第1順位の相続人は、①割当相続人(夫、妻、娘、父母、息子の娘、祖父祖母、全血姉妹、父方の半血姉妹、母方の半血姉妹・半血兄弟)、②アサバ(コーランに相続分が規定されていない父方からなる相続人)、③非アサバとなります。

なお、被相続人がヒンドゥ教徒の場合は、1929年ヒンドゥ相続法が適用されます。被相続人がキリスト教徒及びバールシー教徒(ゾロアスター教徒)の場合は1925年相続法が適用になります。1925年相続法では、不動産については不動産所在地法が適用になり、動産については被相続人の死亡時の住所地法が適用になると規定されていますので、1925年相続法が適用される範囲において日本法への反致が成立する可能性があると考えられます。

栗林総合法律事務所では、パキスタンの法律についての調査を行い、外国の法令についてのアドバイスを行っています。

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