外国人による公正証書遺言の作成をサポートしたケース

相談状況

スイス人のご主人Xは日本人の奥様Yと結婚し、スイスを中心に生活をしていました。ご主人Xには前妻の間に連れ子Aがいます。ご主人Xは、スイスに現預金、保険、不動産などの資産を有するとともに、奥様の地元(静岡県)にご主人の名義で一軒家を所有していました。ご主人Xは自分が亡くなった後、スイスにある財産については奥様Yと娘様Aに相続させ、日本にある一軒家については奥様Yに相続させたいと考えていました。また、奥様が自分より先に亡くなった場合は、日本にある不動産については奥様の妹様に相続させたいと考えています。そこで、XとYのご夫婦は、Xが所有している日本の財産をどのようにすれば奥様(Y)や奥様の妹様に相続させることができるかということで、栗林総合法律事務所に相談に来られました。

解決方法

スイス人のご主人が亡くなった場合、日本の国際私法(通則法)では、ご主人の本国法であるスイス法が相続に関する準拠法となります。但し、スイス法において反致が認められる場合は、日本法が適用になる可能性もあります。このように本件遺産相続についてスイス法が適用になるのか、日本法が適用になるのかについては、スイスの法律によって定まることになります。いずれにしても、ご主人には連れ子Aがおり、奥様YとAの2名が法定相続人になる可能性が高いと思われます。そこで、遺言書がない場合には、日本の不動産については、Aの協力を得て遺産分割協議書を作成しない限り不動産名義変更ができないことになります。しかし、ご主人Xが亡くなった後に、Aから遺産分割協議書にサインをもらえるかどうかが分かりません。また、ご主人が亡くなった後に、Aがどこの国に居住しているのかも分からず、Aと一切連絡がつかなくなる可能性もあります。このような場合、日本に所在する不動産についてはいつまでたっても名義変更ができなくなることになります。栗林総合法律事務所で、国際相続全般についてのコンサルティングを行うとともに、日本の財産については公正証書遺言によって奥様Yに相続させるようにしておくことが重要であるとアドバイスしたところ、ご夫婦とも、栗林総合法律事務所の提案する方向で遺言書を作成することに同意されました。そこで、栗林総合法律事務所では、公正証書遺言の文案や、公正証書遺言作成の日程などの調整を行い、ご主人が来日された折に日本で公正証書遺言を作成しています。なお、栗林総合法律事務所のスタッフ2名が証人として同席しています。ご主人Xが日本で公正証書遺言を作成し、日本にある不動産を全て奥様に相続させる(奥さまがご主人より先に亡くなった場合は、奥様の妹様に相続させる)としていますので、ご主人Xがお亡くなりになった場合は、Y(あるいはYの妹様)は単独で不動産登記名義の変更を行うことができることになります。

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