個人退職年金プラン(IRA)の解約を行い個人年金の支払いを受けたケース
相談状況
アメリカのカリフォルニア州に居住するTさん(日本国籍の女性)が亡くなりました。
Tさんは、生前アメリカの会社に勤務していた時に401Kに加入しており、その後別の会社に移った時に、個人退職年金プラン(Individual Retirement Account)(IRA)に加入していました。
401Kのアカウントについてはポータブル制度によってIRAに移行されています。
栗林総合法律事務所は、A、B、Cから、IRA口座を解約し、IRA口座の残高を日本に送金する手続きを代行するよう依頼されました。
解決方法
IRAはアメリカの個人退職年金プランで、会社で年金プランに加入していないパートタイマーや専業主婦などが加入できる制度です。
ポータブル制度がありますので、会社に勤務していた際に加入していた401(k)のアカウントをIRAに承継(roll over)することもできます。
IRAには、Traditional IRAとRoth IRAの2種類があります。
Traditional IRAでは、拠出金が所得税から控除され、積み立ての段階では所得税の課税を繰り延べすることができますが、IRA口座の解約時に繰り延べされた所得税をまとめて支払う必要があります。
一方、Roth IRAでは、所得税から拠出金額を控除されることはありませんが、引き出し時に課税されません。
Tさんが加入していたのは多くの方が加入しているTraditional IRAでした。
IRA口座の解約についてはプロベイトの対象となりませんので、日本に居住する相続人は自ら口座の解約や資金の移動手続きを行う必要があります。
FidelityやCityなどの証券会社のIRA口座の資金については、直接海外(日本)の金融機関の口座に送金することはできません。
相続人は同じ証券会社において新たに口座開設を行うことが必要となり、証券会社は相続人の口座に資金を移動させることになります。
日本の相続人がアメリカの証券会社の口座を作るためには、各相続人についてITIN番号(Individual Tax Identification Number)を取得することが必要となります。
栗林総合法律事務所では、相続人からの要請によりITIN番号を取得し、相続人3名の口座開設を行いました。
また、Traditional IRAの場合、相続人の口座への資金を移動する際に、繰り延べられた税金の支払いを行う必要があります。
さらに、相続人の口座に移動されたIRAの資金を日本に送金してくるためには、証券会社からIRSの発行するTransfer Certificateの提出を求められます。
栗林総合法律事務所では、Form706-NA によって遺産税の申告を行い、Transfer Certificateを取得し、無事にIRA口座の解約及び日本への送金を行うことができました。
IRA口座の解約やITIN番号の取得は非常に複雑で手間のかかる作業となります。
IRA口座の解約手続きについてお知りになりたい場合は、栗林総合法律事務所までお問い合わせください。